
舟木一夫さんと林与一さんは、芸能界で60年以上にわたり深い絆で結ばれた大親友(そして自他共に認める「悪友」)です。お二人の歴史は、昭和の芸能史を彩るドラマチックな出会いから始まりました。
1. 出会い:1963年・NHK大河ドラマ『赤穂浪士』
お二人の出会いは、舟木さんのデビュー年である1963年の12月(放送は1964年)に遡ります。当時、舟木一夫さんは19歳、林与一さんは21歳でした。
長谷川一夫さんからの直命
この作品の主役・大石内蔵助を演じていたのは、林与一さんの大叔父(師匠)である稀代の大スター・長谷川一夫さんでした。初の本格的な時代劇出演で緊張していた舟木さんのために、長谷川さんが部屋子(弟子)であった与一さんに「舟木の面倒を見てやってくれ」と教育係(お世話係)を託したのがすべての始まりです。
時代劇のイロハを伝授
名門の梨園に生まれ、確かな芸の所作を身につけていた与一さんは、芸能界のしきたりや着物の着こなし、時代劇の所作などを舟木さんに優しく、時にはそれとなく教えたと言われています。
舟木さんは今でも与一さんのことを敬意を込めて「(時代劇の)おじ上」や「おじさん」と呼び、与一さんは舟木さんのことを「押しかけ親友」と表現しています。
2. 深まる絆:舞台での数々の共演
出会い以降、お二人は数え切れないほどの舞台で共演を重ね、互いを引き立て合う最高のパートナーとなっていきました。
2000年:NHK連続テレビ小説『オードリー』
京都の太秦を舞台にしたこの朝ドラで、お二人はともに「時代劇の大物俳優」役(舟木さんは栗部金太郎役、与一さんは桃山剣之助役)として出演し、往年のファンを沸かせました。
2015年:新橋演舞場12月公演『気ままにてござ候』
勝海舟の父・勝小吉を舟木さんが演じたこの舞台でも共演。会見では「芸能界で50年以上も付き合える人はいない」と、長年の友情の深さを語り合っていました。
2017年:芸能生活55周年特別公演『忠臣蔵』
新橋演舞場で行われたこの記念公演では、舟木さんが大石内蔵助、与一さんが吉良上野介という宿敵同士を演じ、出会いのきっかけとなった『赤穂浪士』を彷彿とさせる、お二人ならではの息の合った至高の芝居を披露しました。
4. 現在の関係
現在、お二人はともに80代を迎えられましたが、その友情はいささかも変わっていません。
林与一さんはご自身のYouTubeチャンネルなどで熱く舟木さんとの思い出や交友録を語るなど、何年経っても互いを「特別な存在」として認め合っています。与一さんは「あの方に脇役は似合わない、永遠の主役」と舟木さんへのリスペクトを常に口にされています。
5. 朝ドラ『オードリー』での役どころとエピソード
2000年に放送されたNHK連続テレビ小説『オードリー』では、京都・太秦の映画界を舞台に、お二人が「大京映画の2大トップスター」という、現実の二人の関係を彷彿とさせる役どころで共演しました。
役どころ
舟木一夫さん:栗部金太郎(通称:クリキン)役
林与一さん:桃山剣之助(通称:モモケン)役
劇中での関係と見どころ
作中では、映画からテレビへと時代が移り変わる過渡期の中で、映画のプライドを守りながらも「テレビへ進出するべきか」と苦悩する大御所役をリアルに演じました。若き日の佐々木蔵之介さん(幹幸太郎役)や堺雅人さんらが若手役として出演する中、お二人が見せた「往年の映画スター」としての凄みと息の合った掛け合いは、作品に圧倒的な重厚感を与えました。
楽屋でのエピソード
私生活でも大親友の二人が同じスタジオに揃うため、撮影現場の楽屋はまるで同窓会のようだったと言われています。長年お互いを「ヨイっちゃん(林さん)」「舟木ちゃん(舟木さん)」と呼び合う間柄のため、演じる側としても特別な演技プランが必要ないほど、自然な空気感で撮影を楽しんだと語られています。
6. 2017年の舞台『忠臣蔵』でのエピソード
2017年12月に新橋演舞場で開催された、芸能生活55周年の節目を飾る『舟木一夫特別公演 忠臣蔵』。この舞台は、お二人にとって「原点回帰」となる運命的な公演でした。
配役の妙
舟木一夫さん:大石内蔵助(討ち入りのリーダー)役
林与一さん:吉良上野介(敵役)役
1964年の大河ドラマ『赤穂浪士』とのリンク
お二人が出会った1964年のNHK大河ドラマ『赤穂浪士』では、長谷川一夫さんが大石内蔵助を演じ、その現場で林さんが舟木さんの世話係となりました。それから53年の時を経て、今度は舟木さん自身が「大石内蔵助」を演じ、林さんがその前に立ちはだかる「吉良」を演じるという、ドラマ以上のドラマが舞台上で実現したのです。
会見での絆の証
初日を控えた記者会見で、舟木さんは「一座の長として、綺羅星のごとき役者が揃ってくれたからこそ自分の内蔵助が成り立つ」と共演者に深く感謝しました。特に苦虫を噛み潰したような最高の吉良を演じた林さんに対し、強いリスペクトを表現しています。林さんもまた、「座長(舟木さん)を支えるのが自分の役目」として、宿敵でありながら舞台裏では最高のサポートに徹しました。
7. 林与一さんのYouTubeでのトーク内容
林与一さんは、ご自身の公式YouTubeチャンネル(与一チャンネル)にて、「舟木一夫さんを語る」という動画を定期的に配信し、ファンから大反響を得ています。 [1]
動画内で語られるトークは、長年の「悪友」だからこそ知っている素顔の舟木さんで溢れています。
互いへの敬意
林さんは動画内で舟木さんを「大親友」と呼びつつも、歌手・役者としての舟木さんに対しては常に敬語や深い敬意を払って話されており、その絶妙な距離感に多くのファンが胸を熱くしています。
「あの方に脇役は似合わない、永遠の主役」
林さんは動画内で一貫して、舟木さんへの最大のリスペクトを口にしています。歌謡界のトップを走り続ける舟木さんを「あの人はどこにいても、どんな時でも真ん中に立つべき人。永遠の主役なんです」と称賛しています。
若い頃のヤチャな「職務質問」事件
1964年の『赤穂浪士』撮影中の有名な爆笑エピソードも披露されています。当時、大先輩たちの入り待ちで出番が遅くなり、時間潰しのために衣装(侍の格好)を着たまま刀を持ってタクシーに乗り、四谷の舟木さんのマンションへ向かったそうです。
途中の交差点で警察官に「あなた方は一体何ですか」と不審者として職務質問されてしまい、大ピンチに。その際、焦った舟木さんが窓から「♪赤い夕陽が〜(高校三年生)」と突然歌い出したところ、警察官が「あっ!舟木さんですか!」と気づき、逮捕(?)を免れたという嘘のような本当の裏話を、林さんが楽しそうに語っています。
